2015-01-01から1年間の記事一覧

奇跡 #詩

茫漠と 無限に広がる 宇宙の片隅で 悠久たる 幾億星霜の 時の流れの ひとひらのなか たまたま、 同じ惑星で 同じ時代に 生まれて 出逢った それは あり得ないほど 低い、確率の いたずら 神様が 私にくれた たったひとつ かけがえのない、

フロンティア #詩

遠い 記憶のなか 自宅までの一本道を あなたと二人 手をつないで 歩いたね 今でも 憶えてる 見上げたあなたは 大きく暖かく 幼い私は 何の不安も抱かなかった 年月が経って いつの間にか その背を越えていた あなたは もういない 手を引いてくれる人は ここ…

二人のソリティア #小説

磯部香織が彼と会うのは二回目だった。SNSで知り合ったその男の本名を、まだ彼女は知らない。SNS同様、<ユラ>という彼のハンドルネームで呼んでいた。 二人はデパートの上層階にあるレストランに来ていた。<ユラ>が選んだ店だ。味も雰囲気も悪くない。香織は…

よくわからないことが「かっこいい」と感じる中二病的心理効果について #エッセイ

後半は、小説を書く身として思った内容になっています。 読むだけの人も、「こういう見方もあるのか」と思ってもらえるかも。 気楽にさらっと眺めていただければ、と思います。 聞いたこともない単語が不思議とかっこよく思えたり、理解できないことを話して…

手を伸ばすよ #詩

理不尽は 唐突に襲い来る 誰もが知っている 失われた命が尊いのは 二度と帰らないからと なのに、 理不尽は 唐突に襲い来る どうか 教えてほしい 名前も知らないあなたは いつから私の「敵」だったのかと 私はどうすれば あなたの「味方」でいられたのかと …

誰もひとつ処に留まり続けることはできないと #詩

あなたは言う ――私は変わった、と。 確かに、そう。 いつだって私は 誰かが望むように姿を変えてきた ときには 手足をもぎ、 より強い手足と取り換え ときには 目をもっとよく見える目と 脳をもっと早く回る脳と ためらわず交換してきた こんなグロテスクな…

天使たちの楽園 #小説

風が心地よい。 私は自由だった。 仲間たちに恵まれ、空を自在に駆け回ることができた。 手足を動かしてひと飛びすれば、世界の端から端まで旅することができた。 「ねぇ、今日はどこに行く?」 「あっちの洞窟を通り抜けて見ようよ」 「またあそこ? ……ふふ…

人魚姫のうた #詩

海のお姫様 貴女が陸に上がったのは 想い出の海に 溺れないためだったんだね 大好きだった人間を 想い出すだけの 深い追憶の海に 不器用なお姫様 貴女が言葉を手放したのは 心を隠すためだったのかな 喜びも切なさも恋心も 深い深い 沈黙の奥底に 美しいお姫…

暗闇から抜け出して #小説

僕は一人きり、この真っ暗な世界で生きてきた。 この世に生まれてから、ずっと。 外の世界はもっと明るく、色彩に満ちているらしい。でも、そんなことはどうでもよかった。この闇の中でも、音と匂いを頼りに生きていけるのだから。 僕は誰にも頼らず、一人き…