ひとり衛星航路

――くるくる、ふわり、

地球の周りを回ってる
小さな人工衛星の中は
僕の秘密の隠れ家だ

『やあ、今日も会ったね』

なじみの船が
付かず離れず飛んでいる
わざわざ声を掛けなくても
同じ時の流れに乗って。

――ピコピコ、ピッコン、、

ときどき
メッセージが届く。
僕はそれを見て、くすりと笑う
今日は良いことがあったみたい。

――ふらふら、ガッシャン

まれに
衝突することもある。
小さな傷で済めばいいけど
ボロボロになって
動けなくなることも。

――ふわふわ、プツン、

たとえば、
僕が消えてしまったら、
横を通る君が気づくのは
何日後だろう
何年後だろう

泣いたり、笑ったり、
怒ったり、傷ついたり、

あふれるぐらい
リアルなのに、

この狭い箱の中で
いくら叫んでも
決して君には届かない

――スーッ、パタン。

少し
長居し過ぎたかな。

そろそろ地球に帰るね。

『バイバイ』