人魚姫のうた #詩

海のお姫様
貴女が陸に上がったのは
想い出の海に
溺れないためだったんだね

大好きだった人間を
想い出すだけの
深い追憶の海に
 
 
不器用なお姫様
貴女が言葉を手放したのは
心を隠すためだったのかな

喜びも切なさも恋心も
深い深い
沈黙の奥底に
 
 
美しいお姫様
貴女が空気になったのは
ずっと この星に
残るためだったの

あるいは
心も想い出も 何もかも
捨て去ってしまうため

あの海の 彼方に
 
 
アンデルセン作『人魚姫』に寄せて)